なんで保育園で鍵盤ハーモニカをするの?


毎年鍵盤ハーモニカってするけどさ、
そういえば、なんで鍵盤ハーモニカってするようになったんだろ?
小学校でもするから?
…それだけじゃない気もする!

そうだね。
そもそも、なんで鍵盤ハーモニカや音楽教育が重視されているか、
音遊びや音楽がなぜ大切なのか…

毎年やっているから…って見逃しがちだけど、
「どうしてするのか」って考えることで
保育のなかでの役割が見えてくることもあるよね。
まずは、鍵盤ハーモニカがいつから使われるようになったかみてみよう。


鍵盤ハーモニカの歴史と教育への広がり

鍵盤ハーモニカ(ピアニカやメロディオン)は、1960年代に日本で開発されました。当時、小学校の音楽教育ではオルガンやハーモニカが主に使用されていましたが、オルガンは高価で数が限られ、ハーモニカは指導が難しいという課題がありました。このような背景から、鈴木楽器製作所の創業者である鈴木萬司氏は、音階学習に適した新しい楽器として鍵盤ハーモニカを開発しました 。

初期の鍵盤ハーモニカは普及に苦労しましたが、改良を重ね、全国での講習会や文部省への働きかけを通じて、徐々に教育現場に浸透していきました。特に1970年代に入ると、学習指導要領の改訂により「基礎」領域が設けられ、鍵盤ハーモニカが音楽教育において有効な教材として位置づけられるようになりました 。

鍵盤ハーモニカは、息を吹き込みながら鍵盤を操作することで音を出すため、子どもたちが音楽の基本的な要素であるリズムやメロディを体感しやすい楽器です。また、視覚的に音階を確認できるため、音楽理論の理解にも役立ちます。このような特性から、鍵盤ハーモニカは日本の音楽教育において重要な役割を果たしてきました。

鍵盤ハーモニカって最初から音楽教育のために開発されていたんだね。


保育所保育指針・幼稚園教育要領における“音楽表現”の意味

保育所保育指針:表現

オ 表現

感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。

ア ねらい

① いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。

② 感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。

③ 生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。

イ 内容

① 生活の中で様々な音、形、色、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして楽しむ。

② 生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。

③ 様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。

④ 感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりなどする。

⑤ いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。

⑥ 音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わう。

⑦ かいたり、つくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり、飾ったりなどする。

⑧ 自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりするなどの楽しさを味わう。

ウ 内容の取扱い

上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。

① 豊かな感性は、身近な環境と十分に関わる中で美しいもの、優れたもの、心を動かす出来事などに出会い、そこから得た感動を他の子どもや保育士等と共有し、様々に表現することなどを通して養われるようにすること。その際、風の音や雨の音、身近にある草や花の形や色など自然の中にある音、形、色などに気付くようにすること。

② 子どもの自己表現は素朴な形で行われることが多いので、保育士等はそのような表現を受容し、子ども自身の表現しようとする意欲を受け止めて、子どもが生活の中で子どもらしい様々な表現を楽しむことができるようにすること。

③ 生活経験や発達に応じ、自ら様々な表現を楽しみ、表現する意欲を十分に発揮させることができるように、遊具や用具などを整えたり、様々な素材や表現の仕方に親しんだり、他の子どもの表現に触れられるよう配慮したりし、表現する過程を大切にして自己表現を楽しめるように工夫すること。

幼稚園教育要領:表現

表現

 感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。

1 ねらい

(1)いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。

(2)感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。

(3)生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。

2 内容

(1)生活の中で様々な音、色、形、手触り、動きなどに気付いたり、楽しんだりする。

(2)生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。

(3)様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。

(4)感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりする。

(5)いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。

(6)音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わう。

(7)かいたり、つくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり、飾ったりする。

(8)自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりする楽しさを味わう。

3 内容の取扱い

 上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。

(1)豊かな感性は、自然などの身近な環境と十分にかかわる中で美しいもの、優れたもの、心を動かす出来事などに出会い、そこから得た感動を他の幼児や教師と共有し、様々に表現することなどを通して養われるようにすること。

(2)幼児の自己表現は素朴な形で行われることが多いので、教師はそのような表現を受容し、幼児自身の表現しようとする意欲を受け止めて、幼児が生活の中で幼児らしい様々な表現を楽しむことができるようにすること。

(3)生活経験や発達に応じ、自ら様々な表現を楽しみ、表現する意欲を十分に発揮させることができるような遊具や用具などを整え、自己表現を楽しめるように工夫すること。

保育所保育指針でも幼稚園教育要領でも「音やリズムに親しみ、感じたことを自由に表現すること」が重視されているね。

自分なりの音を見つけたり、友達との響き合いを楽しんだりすることを、鍵盤ハーモニカの活動でも大切にしていきたい!


主体的な音楽経験としての鍵盤ハーモニカ

現代の保育でよく言われる「主体性を育む」という視点。
鍵盤ハーモニカの活動においても、大人が決めた型を教えるのではなく、 子ども自身が音やリズムに出会い、 感じたことを音で表現する…そんな経験を大切にしたいですよね。


たとえば「好きな音を探してみよう」「お話の場面に合う音をつけてみよう」というように、
子どもが音で自由に表現できる場面を用意することで、「ドレミ」や指番号に縛られる前に、
「音を出してみたい」「まねしてみたい」「誰かと一緒にやってみたい」
という気持ちをはぐくむことも必要ではないでしょうか。

「お化け屋敷ごっこ」をしていた子どもたちが「お化けの音も作りたい!」と言って、そこから鍵盤ハーモニカや打楽器の鳴らし方をいろいろ試してお化け屋敷の効果音作りに活動が広がったことも。
友達同士でいろんな音色を試しながら、大笑いしていて、楽しかったなぁ。

朝の出席確認のとき、お返事代わりに鍵盤ハーモニカを吹いてもらったり…交代でお話にBGMをつけてもらったり、
「自分なりの表現」をするための取り入れ方も、いろいろあるね。


さいごに

「なんで音楽教育をするのか?」
答えは人それぞれかもしれません。

私自身、嬉しいとき、悲しいとき、孤独なとき…
音楽がそばにあることで心がほどけたり、言葉にならない思いを表現できたり、
音楽に支えられた経験がたくさんあります。

保育現場では、幼児さんはもちろん、1歳児クラスの子どもたちでさえ、
同じ音楽を聴いて笑い合ったり手拍子したり、踊ってみたり…
言葉はなくとも「一緒にいること」の喜びを感じている瞬間に立ち会うことができました。

気持ちの表現や開放ができたり、言葉を超えた人とのつながりが生まれたり、
感じ方に「正解」がないからこそ想像力がふくらんだり…
音楽を聴くことそのものの癒し効果や発達へのよい影響もあると思います。

鍵盤ハーモニカは、あくまでアイテムのひとつです。
でも、鍵盤ハーモニカを通して、子どもたちが「表現したい!」という気持ちをふくらませ、
友だちと音を合わせる楽しさや、自分で音を奏でる喜びを感じてくれたら…。

きっとその子の人生を彩る経験のひとつになると思うのです。

教え込むよりも、感じあい、伝えあう。
日々の保育の中で、子どもたちが音に出会い、自分なりの響きを見つけていけるような鍵盤ハーモニカの時間になることを願ってやみません。

引用・参考文献

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